3キャリア対応ゲームアプリシリーズ、「夢魔の天蓋」「夢幻狂詩ネクロノミコン」「夢幻舞葬モンストラバルツ」について考察やら妄想やら色々。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
その時私は、この子は助からないかもしれないと思った。
突如現れた異界の門。その只中で、ジンを発見した、その時。ジンの左腕は既に、魔素に侵され形を歪めてしまっていた。
魔素に侵されれば、帰依者となるしかない。魔術的措置を施せば、そう、今すぐなら助かるかもしれない。が、その左腕は確実に失う事になろう。
だが、この異界の規模、渦巻く魔素の量からして、措置が間に合うかどうか……。
私はそれが杞憂である事を望んだ。
もう一つ、抱える最悪の予感と共に、思い過ごしならよいと。
左腕を抱えるようにしているジンは、私の姿を見ると驚いたような顔をして、それから直ぐに手を差し延べた。歪んでしまった方の手を。
助けを求めている。そう思い駆け寄る私に、ジンは。
「……界の掌握は」
と、そう言った。……それは未だだ、そう言おうとして少し躊躇った。先ずはジンを連れて出る事が肝要だろう。
だが、ジンの科白には、続きがあったのだ。予想だにしない続きが。
「……既に、済んでいます……後は、自己崩…壊の、術式、を」
済んでいる?
この異界を一人で……?いや、誰か協力者がいたのか?
……いや、それは有り得ない。ここには彼以外には「人間」はいない。その事実は、既に確かめた。
消耗しきった身体をヨロヨロと動かし、術式を始めようとするジンを、私は止めた。
「あとは私がやろう。その魔素がこれ以上侵食しないようにせねば……」
「……心配、いりません……教授……れを……媒……し………開……」
何だと?
意識を手放しかけたジンが途切れ途切れに言った言葉に、私は耳を疑った。
『これを触媒にして術式を展開します』
これ?
これとは、その左腕の事か?
突如現れた異界の門。その只中で、ジンを発見した、その時。ジンの左腕は既に、魔素に侵され形を歪めてしまっていた。
魔素に侵されれば、帰依者となるしかない。魔術的措置を施せば、そう、今すぐなら助かるかもしれない。が、その左腕は確実に失う事になろう。
だが、この異界の規模、渦巻く魔素の量からして、措置が間に合うかどうか……。
私はそれが杞憂である事を望んだ。
もう一つ、抱える最悪の予感と共に、思い過ごしならよいと。
左腕を抱えるようにしているジンは、私の姿を見ると驚いたような顔をして、それから直ぐに手を差し延べた。歪んでしまった方の手を。
助けを求めている。そう思い駆け寄る私に、ジンは。
「……界の掌握は」
と、そう言った。……それは未だだ、そう言おうとして少し躊躇った。先ずはジンを連れて出る事が肝要だろう。
だが、ジンの科白には、続きがあったのだ。予想だにしない続きが。
「……既に、済んでいます……後は、自己崩…壊の、術式、を」
済んでいる?
この異界を一人で……?いや、誰か協力者がいたのか?
……いや、それは有り得ない。ここには彼以外には「人間」はいない。その事実は、既に確かめた。
消耗しきった身体をヨロヨロと動かし、術式を始めようとするジンを、私は止めた。
「あとは私がやろう。その魔素がこれ以上侵食しないようにせねば……」
「……心配、いりません……教授……れを……媒……し………開……」
何だと?
意識を手放しかけたジンが途切れ途切れに言った言葉に、私は耳を疑った。
『これを触媒にして術式を展開します』
これ?
これとは、その左腕の事か?
PR
まぁ、こういう場合の予感ってやつは大概当たるものなんだろうな。これがただの気のせいならどんなにいいだろうと思うが。
夢ってやつは繰り返すんだろうか。それとも、流れていくのだろうか。いや、どちらもか。
きっと似てるんだろうな。そう思う。隣で煙草を吸うジンの姿。かつて彼が憧れていたという、その父親の姿に。ジンに言っても否定するだけだろうが。
それに、その『父親』は、ジンから様々なものを奪った。大切なものを。
知らない時はわからなかった。
ジンは何も語らなかったから。
適当にごまかすことも、おどける事も出来ない不器用な男は、ただ黙っていた。訳がわからずイライラもしたが、全てを知った今、どんな気持ちで黙っていたのだろうと思う。
飲み込んで、抱えるには大きすぎただろう。だから教授もジンを気にかけていたのだろう。
そして多分、それが取り除かれた後に出来た穴は大きく、深いだろう。
その穴を埋める術は、見つかったのだろうか。
これから彼は、どうやって生きていくのだろうか。
魔法使いとして。
それとも、もっと別の。
別の。
…夢を。
ああ、そんな事を思ううちに、夢から醒めてしまうな。
いや、醒める事はないのか。
次の夢を見るだけ。
夢から、また夢へ。
視界に段々霞がかかってくる。僅かずつ歪んで、それから色味が失われていく。白く、モノクロームに。
……もしかしたら、目が醒めたという夢を見るだけかもしれない。
そしてまた夢を見続けるのだ。
眠る事を、望んだのだから。
次の瞬間、視界に公園は写っていなかった。
ベンチに腰掛けてもいないし、隣にジンはいない。
ただ、口には煙草が、あった。
END
夢ってやつは繰り返すんだろうか。それとも、流れていくのだろうか。いや、どちらもか。
きっと似てるんだろうな。そう思う。隣で煙草を吸うジンの姿。かつて彼が憧れていたという、その父親の姿に。ジンに言っても否定するだけだろうが。
それに、その『父親』は、ジンから様々なものを奪った。大切なものを。
知らない時はわからなかった。
ジンは何も語らなかったから。
適当にごまかすことも、おどける事も出来ない不器用な男は、ただ黙っていた。訳がわからずイライラもしたが、全てを知った今、どんな気持ちで黙っていたのだろうと思う。
飲み込んで、抱えるには大きすぎただろう。だから教授もジンを気にかけていたのだろう。
そして多分、それが取り除かれた後に出来た穴は大きく、深いだろう。
その穴を埋める術は、見つかったのだろうか。
これから彼は、どうやって生きていくのだろうか。
魔法使いとして。
それとも、もっと別の。
別の。
…夢を。
ああ、そんな事を思ううちに、夢から醒めてしまうな。
いや、醒める事はないのか。
次の夢を見るだけ。
夢から、また夢へ。
視界に段々霞がかかってくる。僅かずつ歪んで、それから色味が失われていく。白く、モノクロームに。
……もしかしたら、目が醒めたという夢を見るだけかもしれない。
そしてまた夢を見続けるのだ。
眠る事を、望んだのだから。
次の瞬間、視界に公園は写っていなかった。
ベンチに腰掛けてもいないし、隣にジンはいない。
ただ、口には煙草が、あった。
END
しばらく二人の間に沈黙が走った。ジンは、根本まで吸い終わった煙草を灰皿に押し付け、懐から煙草の箱を取り出した。片手で器用に開けようとするのを、俺は横からさっと取り上げる。
「……何を」
「俺にも一本寄越せ」
「……」
何も言わずにただ睨むジンを尻目に、二本箱から取り出して一本くわえ、もう一本を、フィルター側を向けて、ジンに差し出した。
少しの間ジンはそれをただ見つめていたが、やがて右手が伸びて来て煙草を取り、口にくわえる。懐からライターを取り出して火を付け、こっちにも差し出して来た。
吸い込んだ煙は苦く、少し噎せそうになる。
ジンは、遠くを歩く親子連れをぼんやりと眺めながら、ゆっくり煙を吐き出していた。
「お前の母親は、報奨金の受け取りを断るそうだ」
「ふぅん…報奨金が出るのか、俺にも」
「ああ。法外な金額だ。一般人なら一生働かなくてもいい額だろう」
何だか意外な気もした。もう居なくなったも同然なのに、金が貰えるなんて。
「お前が貰った金だから貰うわけにいかない…そう言っていた」
「母さんらしいや。俺の仕送りも、いらないって何度も言われたしな」
意地みたいなもんだった。少ない金額だったし、母さんにも仕事がある。多分、本当はそれほど必要なかったのだろう。
それが、法外だと言われる金額になっても。
一目逢いたかったけど、何だかそれは無理みたいだ。
俺はきっと、ここでジンと話をするのが精一杯だと思う。
「……何を」
「俺にも一本寄越せ」
「……」
何も言わずにただ睨むジンを尻目に、二本箱から取り出して一本くわえ、もう一本を、フィルター側を向けて、ジンに差し出した。
少しの間ジンはそれをただ見つめていたが、やがて右手が伸びて来て煙草を取り、口にくわえる。懐からライターを取り出して火を付け、こっちにも差し出して来た。
吸い込んだ煙は苦く、少し噎せそうになる。
ジンは、遠くを歩く親子連れをぼんやりと眺めながら、ゆっくり煙を吐き出していた。
「お前の母親は、報奨金の受け取りを断るそうだ」
「ふぅん…報奨金が出るのか、俺にも」
「ああ。法外な金額だ。一般人なら一生働かなくてもいい額だろう」
何だか意外な気もした。もう居なくなったも同然なのに、金が貰えるなんて。
「お前が貰った金だから貰うわけにいかない…そう言っていた」
「母さんらしいや。俺の仕送りも、いらないって何度も言われたしな」
意地みたいなもんだった。少ない金額だったし、母さんにも仕事がある。多分、本当はそれほど必要なかったのだろう。
それが、法外だと言われる金額になっても。
一目逢いたかったけど、何だかそれは無理みたいだ。
俺はきっと、ここでジンと話をするのが精一杯だと思う。
ジンは、少し考えるように煙草を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。その仕種は年季の入ったヘビースモーカーそのものだ。
「…半年だ」
「半年…」
言われた時間をそのまま繰り返す。半年後か、あれから。頭に染み通っていくまでに少し時間がかかる。そんな実感は湧いてこない。
「そんなに、経ってるのか」
「ああ」
短く返事を返すジンに嘘偽りはない。そもそも、ジンが嘘を吐いたところを見たことが無いし、嘘を吐いて白々しくいられるような器用な奴でもない事は、よく知っている。
だけどやっぱり、実感は湧かない。ただ、少し居眠りをして目が覚めた、そんな感覚があるだけだったから。……いや、多分、目覚めたという夢を見てたってオチだろう。第一、俺がここにいられる筈は無いのだから。
俺は、そう、目の前の魔法使いに、機能を停止されたのだから。…そして、俺もそれを望んだ。目覚めていてはいけない存在と化した事を、知ってしまったから。皮肉にも、そうなってしまった瞬間に。
「だから、宝鍵を……切断、したのか?」
中身のない袖。宝鍵を懐に抱えるでもなく、ただ、何もない左腕。気になっていた。恐らく、一番。
「ああ。切った。魔力の供給源であった奴が消えた今、あれは単なる呪染された腕でしかない。だから切った。被害が広がる前に」
「呪染された……腕、か」
いびつな形をしていたのを覚えている。ジンの腕も怖いくらい変形していたが、俺は、それよりも、呪染され死を望んだあの中尉の事を思い出してた。
かなりの部分が捻曲がり、それでも目は、表情は、そのままで。
あの時は、悲しくて、でも怒りもあって、こんな悲しい現実を見せられて、黙っていられなくて……。まさか、自分も同じような境遇になるなんて、思っても見なかった。
……まだ夢を見ていられるだけ、幸せなのかもしれないが。
「…半年だ」
「半年…」
言われた時間をそのまま繰り返す。半年後か、あれから。頭に染み通っていくまでに少し時間がかかる。そんな実感は湧いてこない。
「そんなに、経ってるのか」
「ああ」
短く返事を返すジンに嘘偽りはない。そもそも、ジンが嘘を吐いたところを見たことが無いし、嘘を吐いて白々しくいられるような器用な奴でもない事は、よく知っている。
だけどやっぱり、実感は湧かない。ただ、少し居眠りをして目が覚めた、そんな感覚があるだけだったから。……いや、多分、目覚めたという夢を見てたってオチだろう。第一、俺がここにいられる筈は無いのだから。
俺は、そう、目の前の魔法使いに、機能を停止されたのだから。…そして、俺もそれを望んだ。目覚めていてはいけない存在と化した事を、知ってしまったから。皮肉にも、そうなってしまった瞬間に。
「だから、宝鍵を……切断、したのか?」
中身のない袖。宝鍵を懐に抱えるでもなく、ただ、何もない左腕。気になっていた。恐らく、一番。
「ああ。切った。魔力の供給源であった奴が消えた今、あれは単なる呪染された腕でしかない。だから切った。被害が広がる前に」
「呪染された……腕、か」
いびつな形をしていたのを覚えている。ジンの腕も怖いくらい変形していたが、俺は、それよりも、呪染され死を望んだあの中尉の事を思い出してた。
かなりの部分が捻曲がり、それでも目は、表情は、そのままで。
あの時は、悲しくて、でも怒りもあって、こんな悲しい現実を見せられて、黙っていられなくて……。まさか、自分も同じような境遇になるなんて、思っても見なかった。
……まだ夢を見ていられるだけ、幸せなのかもしれないが。
「一人で日本へ?」
「いや、Ms.クインも一緒だ」
「今は」
大事な話だろう、奇認会にとっても。なのに姿が見えないのは不思議だった。
「ホテルにいる。同行は断った」
「何で」
即座に疑問が口をつく。
問われたジンは、少し躊躇うように目を泳がせ、煙草を大きく吸うと、ゆっくり煙を吐き出した。そして、口を開く。
「……ただ、俺から話したかっただけだ」
「そうか……」
少し、意外だった。何でもはっきり言う奴だから、Ms.クインが止めるかと思っていた。
「信じてなかったろ?昔から、超常現象みたいのは信じなかったからな」
「ああ……。だが、何となく察したようだった」
「……そう、か」
ジンが嘘を言っている訳ではないと、分かってしまったのだろう。母さんは、あれでいてなかなかカンの鋭い人だから。全てを信じた訳ではないにせよ。
大体、俺だって未だにどこか信じられずにいる。あれは夢だったのではないか、と、
いや、今こうしてここに居るのが夢…なのか?一体、どこから夢で、どこまでが現実の出来事だった?
……わからない。時間の感覚も曖昧な気がする。
「……あれから、どの位経ってるんだ」
ふと思った疑問を投げ掛けてみる。
「いや、Ms.クインも一緒だ」
「今は」
大事な話だろう、奇認会にとっても。なのに姿が見えないのは不思議だった。
「ホテルにいる。同行は断った」
「何で」
即座に疑問が口をつく。
問われたジンは、少し躊躇うように目を泳がせ、煙草を大きく吸うと、ゆっくり煙を吐き出した。そして、口を開く。
「……ただ、俺から話したかっただけだ」
「そうか……」
少し、意外だった。何でもはっきり言う奴だから、Ms.クインが止めるかと思っていた。
「信じてなかったろ?昔から、超常現象みたいのは信じなかったからな」
「ああ……。だが、何となく察したようだった」
「……そう、か」
ジンが嘘を言っている訳ではないと、分かってしまったのだろう。母さんは、あれでいてなかなかカンの鋭い人だから。全てを信じた訳ではないにせよ。
大体、俺だって未だにどこか信じられずにいる。あれは夢だったのではないか、と、
いや、今こうしてここに居るのが夢…なのか?一体、どこから夢で、どこまでが現実の出来事だった?
……わからない。時間の感覚も曖昧な気がする。
「……あれから、どの位経ってるんだ」
ふと思った疑問を投げ掛けてみる。
最新記事
(11/13)
(10/05)
(10/05)
(09/17)
(06/18)
最古記事
プロフィール
HN:
みずすまし
性別:
非公開