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3キャリア対応ゲームアプリシリーズ、「夢魔の天蓋」「夢幻狂詩ネクロノミコン」「夢幻舞葬モンストラバルツ」について考察やら妄想やら色々。
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 目を閉じると瞼の裏に先程見た光景が焼き付いている。それは正しくジンの目の前で起こった現実であり、夢なのではないのだという事を、異形の左腕が語る。これが無ければ現実なのかそうではないのか解らなくなりそうな出来事だったが。
 この左腕…宝鍵が、ここにこうして存在しているが故に、現実を失わないでいられる。そしてこの身に刻まれたこの異形は、奴を倒す為の道具でもある。
 空間を切り裂き、第三界への接触を可能にするこの腕は、強力な魔術を駆使するための媒介となり、これによって奴に対抗しうる力を手に入れる事が出来たのだ。
 無論、ただで手に入った力ではない。だがそのための労力なぞ、……たいした事ではない。奴を伐てる力を得られたという事に比べれば。

 ふと、視線を巡らすと床に何かが落ちているのを見つけた。
 本だ。
 自分には覚えはない。この図書館にある膨大な蔵書は知識を深め敵をより良く知る為に利用するが、持ち出したりはしない。
 ……あいつか。
 つい先刻、ここに来た…速水。
 最近は本ばかり読んでいる。知識を付けろと言ったのは自分だが、それにしても凄い数の本を積み上げては読破しているらしい。見た訳ではない。教授が漏らしていただけだが。
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 俺には現実しか存在しなかった。「夢」と呼ばれるそれでさえ、俺にとっては現実だった。
 真理も知識もくそくらえだ。それ自体は目的になど成り得ない。手段でしかない。
 何でもする。
 目的の為ならば。
 人道を外れる事だと言われても構わない。
 そう、誓った。
 何故ならそれは、俺から現実の全てを奪って行った凶器に他ならないからだ。
 それ以来、俺を取り巻く全てはただ在るがままの現実というものになったのだ。

 またあの夢を見た。夢は何度も何度も、同じシーンを繰り返す。その度に何度も苦しみ、悲しみ、そして憎む。
 奴を。
 自分の興味の為だけに、夢の世界の裏側を覗こうと思った、それだけで、ジンから全てを奪って行った、あの男を。
 ……滅する為に。

 ジンは暗い部屋の中で一人そんなことを考えていた。取り留めもない。今は結末が見えないから。
 今は未だ、知らなくてもいい事だ。ここ数日の体験や、劇的に変えられた生活…それらに対する焦りはある。だが、それでも知らない方がいい事はある。
 ジンは、その心に何を抱えているのだろうか。気になったが、そこまで踏み込む必要は無い。
 ……いずれ分かる時が来る。
 隆介は、そう思う。何故か確信めいた考えだった。覗きたくないと思っても、目をつむり耳を塞いでもなお、目の当たりにする時が来る。
 出会ってから数日しか経ってない、しかも、最悪な出会いを果たした相手に何故こんな事を思うのか。
 不思議だった。だがこの確信は確信として、はっきりとある。
「…大人しく寝るか」
 眠くはない。すっかり目が冴えてしまっている。いやそもそも眠くならないのだ、この身体になってからは。ただ、眠らなくてはならない気がして寝るだけ。……人間らしさのようなものを保っておきたいという気持ちがあるのかもしれない。
 取り敢えず、ベッドで本を読んでいればそのうちうとうとしだすだろう。そう考えてから、本が無い事に気が付いた。あの時、落としてしまったらしい。
 だが、あの男の部屋に取りに戻るのも気が引ける。
 ……まぁ、いいか。今夜は。
 月でも見て、物思いに耽るのも悪くない気がする。
 恐らく、彼は明日も変わらぬ態度で接して来るだろう。今日の好奇心や感傷を全て否定するかのように。
 でも、それでいい。
 暫くは…魔器でいてやろう。

 他に道はないのだから。

end
「……出て行け」
 繰り返す。言い聞かせるように。
「なぁ…」
 あんたを掻き乱すのは一体何なんだ。
 …聞いたら、怒るだろうか。きっと何も答えないだろう。そういう性格なのだという事は分かっている。つい数日前、出会ったばかりだが。弱みが全くと言っていい程見えない。
 完璧な人格など無い。それらしいものが有ったとして、それは完璧に見せ掛けているだけだ。目の前の男とて、例外は無い。
「……っ、夢見が悪かっただけだ…分かったら出て行け」
 隆介の聞きたい事を察したのか、ジンはそう言うと、隆介を睨み付けた。
「…………」
 隆介は何も言わず、静かに部屋を出た。知りたい気持ちはあったが、何も教えてはくれないだろうという確信もまたあった。
 静かに閉まる扉は、その好奇心を戒めるようにも思えた。
「………クッ」
 苦々しげに呟くと、ジンは隆介から腕を離した。舌打ちをして、それから、ソファへと座り込む。隆介を見ないまま、溜息を漏らし、何かを振るい落とすかのように首を二、三回振った。
「出て行け……」
 低く漏らされる呟き。
 冷たく。拒絶するかのような。いや、それはいつもの事ではあるのだが。それでも、疑問が湧き起こる。
 どうして。
 好奇心を掻き立てられていたのかもしれない。駄目だとわかっていながら。それでも知りたいと。
「あんたが苦しそうにしてたから……気になったんだ」
 何に対して、それ程までに苦しむ?
「部屋の鍵が開いてたから、つい……」
 言い訳じみている。そう感じながらも隆介は喋り続けた。
「……出て行け。貴様には関係ない…っ」
 ジンは繰り返す。苦渋を滲ませた声色で。
 
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