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3キャリア対応ゲームアプリシリーズ、「夢魔の天蓋」「夢幻狂詩ネクロノミコン」「夢幻舞葬モンストラバルツ」について考察やら妄想やら色々。
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 自分の全活動を凍結するための術式だというのにそれはほの暖かく、胸の奥の方から指先へ、足先へ、目の奥へと満たされて行く様だった。
「不思議だな」
「……何が」
 ぼそり呟く声に、ぶっきらぼうな男の声が返る。
「苦しくない」
 もっと苦痛を伴うものだと思って居た。
「術式への抵抗がないからな」
「そうか」
 一度異界から生還した俺が、帰依者の襲撃に遭ったあの日、運命の日。目の前に現れた魔術師の放つ術式は得も言われぬ苦痛を伴った。正気を保てていたのが不思議なくらいの苦痛に言葉も出ず、目眩と吐き気で世界がぐにゃりと歪んで見えた。
 戦う為「ロア」として魔素を開放する時でさえ、四肢がバラバラに引き裂かれる痛みと、耳元で煩く喚き散らす虫の羽音のようなノイズに苛まれた。声は声にならず喉からは獣の咆哮が漏れ、酷いノイズと歪む視界の中で、術者だからだろうか、ジンの姿と声だけはハッキリとして居た。
 が、「白痴の揺り篭」に足を踏み入れ自らに制御式を取り込む事が出来た今、視覚も聴覚も、全てがクリアになった今、肝心の、ジンの姿が、よく見えない。

 ……いや。
 これは、単に……涙で視界がぼやけて居るだけだ。
 ロアの姿でも、涙を流す事が出来るのだろうか?
 そんな疑問に駆られながらもふと目を凝らすと、鉄面皮でいつも不機嫌そうにして居た目の前の男は、憂いとも悲しみとも付かぬ複雑な表情をしていた。

 そんな顔見るの初めてだな。まぁ知り合って指折る程しか経ってないけど。あんたと居たのは禄でもない体験で、しかもこんな禄でもない結末だったけど、でも、あんたにそんな表情をして貰えただけで得した気分だよ。

 つ…と、一筋、たった一筋、ジンの頬に伝う光る筋。それを確認すると、もう堪らなくなって手を伸ばす。伸ばした手はロアの異形ではなく人間の、速水隆介の手で、少し驚く。

 ああ、身体。もう動かないのか。活動が凍結されようとしてるんだもんな。じゃあこの腕は、今の速水隆介の腕は、思考は、何なのだろう。魂とか意識とか…幽体とでも言うものだろうか。
 でももし、この腕でもジンの涙を拭う事が出来るのならそれだけで十分で、身体などどうでもいい事だと思う。
 泣いた処を見た事はないし、泣くなんて想像も出来ない。傲慢で気丈でいつも眉間に皺を寄せ、尽きる事のない炎を奥底に感じる、そんなジンが泣く様など。
 でもその炎は深い憎しみと復讐に彩られて居たんだよな。その憎しみの対象であるジャッジマンも、彼の犠牲になりながらも彼を愛したアリスも消えてしまった。
 そして今。ジン、あんたは何を思う?
 伸ばした手がジンの頬に触れる。暖かい。透けたような手でもちゃんと感触がある。そっと涙を拭うと、目を細めて、辛そうに、一言。

「すまない……」

 謝らないでくれ、そんな表情をして。仕方が無かったんだ、こうなる事は。アリスに出会ってしまった時から、アリスの手を取ってしまった時から、こうなる事は決まって居たんだ。この運命を定めたのは俺自身。ジンの力が及ばない訳じゃない。
 折角良いパートナーになれたと思ったのにな。もしかしたら俺が此処へ来て初めてかも知れないんだ。
 心から信頼出来た人。
 衝突しながらも心通わせ、信頼と不安とを共有し、その身を案じ合う事の出来た存在は。
 だから。
 色々あったけどさ、俺はこれで満足なんだよ。生きて欲しいと願ってくれたのは凄く嬉しかった。けど、俺が生に、人間の夢を視る事に拘って新たな危険を触発してしまうよりは、あんたの手で凍結される方が余程いい。誰でもない、あんたの子守歌で俺は眠り、揺り篭の住人を起こさないよう身を潜める事が出来るのだから。

「今までは恨みの為に振るったその魔術を、今はただ、俺だけの為に。なぁ、ジン」

 あんたのお陰で、人として居られるんだぜ。
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